【ガルナイ・メガスタ】そしてどうかその視線を私にと願いながら仰いだ

令和に平成三部作を鑑賞した新参者です。

マイ伝スタスク⇒SLナイスクが同一人物だったら、また同一人物として扱われていたら良いなというお話。

こちらは完結していますが、

4/14のオルヘで、さらにGFと同一人物だったら良いなという部分を書き下ろして本にしました。

(最下部に通販リンクあります)



「よくやった、ナイトスクリーム」

 お褒めの言葉をくださるガルバトロン様にこうべを垂れて応えながら、私は己のスパークの鈍い痛みを堪えていた。

 時折訪れる原因不明の不調。耐えきれぬ程の痛みではなく、かといって無視することもできない。

 じくじくと責め立てるような痛みは、決まって主君から功績を認められたときに起こった。

 我が主・ガルバトロン様は折にふれて私の忠誠心を称えてくださる。もったいなきお言葉。ガルバトロン様は私の総てだ。主君に忠義を尽くすことは、私にとって排気と等しいほど自明のことだというのに。

 かくしてスパークの痛みに耐え(時に同僚達からの不興を買いながら)、身に余る言葉の数々を賜る日々が続いたある日。

 ふいに私は気が付いた。気付いてしまった。

 ガルバトロン様が私を通して何者かを見つめていることに。

 なにをもってそう察したのかと問われると答えに窮するが、しいて挙げるとするならば。視線、だろうか。ガルバトロン様のアイセンサーは真っ直ぐに私を捉えているはずなのに、その焦点は遙か遠くに合っているような。なんとも奇妙な感覚に襲われたのである。

 ひどく抽象的な表現ではあるけれど、以前、お喋りな同僚らの会話の中で耳にした【私に似た元デストロン戦士】の存在と照らし合わせてみると、不思議とこの直覚が確然たる事実であるように思えてきた。

 似ているのは見た目だけ。性格はまったく異なると、皆くちを揃えていたが。

 

 ――もしやガルバトロン様は、そのかつての部下と私を重ねているのではないか。

 

 ひとたびブレインにもたげたこの疑念は、その後私を嘲るかのように事ごと現れた。ご命令に従って出陣する時。陣頭指揮を執る時。僭越ながらガルバトロン様の策に忠言を呈する時。私を見下ろすガルバトロン様の表情に思慕の念を見い出し、そのたびスパークがざわめく。

 まるで警鐘だ。これ以上思考してはならぬという、警告。そうでなければ浅ましい思いに蝕まれてしまうから。

 私にはガルバトロン様と出会う前の記憶がない。元を辿れば壊れたデストロン兵士の残骸を寄せ集めてアルファQが私を甦らせたという話だから、仮に特定の誰かを模していたとて、生前のその者自身にはなり得ない。

 ゆえに私が何者かという論考は無意味だ。にもかかわらず、ガルバトロン様が私を通して見つめる誰かに思いを巡らさずにはいられぬ矛盾。煩わしいその思考を意志の力で猛然と振り払う。

 私に過去は必要ないとガルバトロン様はおっしゃった。私もガルバトロン様との未来さえあれば良いと心より思っている。たとえ誰かの代わりであったとしても。

「よくやった。ナイトスクリーム」

「……身に余るお言葉です。ガルバトロン様」

 答えながら、スパークがまた鈍く軋むのを感じた。


そしてどうかその視線を私にと願いながら仰いだ

あにま。

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